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創業100年を見据え、ありたい姿を描き分かち合う

ソニーデザインコンサルティングでは、企業のブランディングや製品開発、プロダクトデザイン支援だけでなく、企業そのものやチームの文化醸成など、デザイン発想に基づいた総合的なデザインコンサルティングサービスを提供しています。中でも近年、多く相談が寄せられているのが、企業理念や行動指針を含む、企業の“在り方”そのもののコンサルティングです。

創業100年の節目を迎えるため、自社の存在意義を改めて見つめ直していた京王重機整備と、ソニーデザインコンサルティングとの出会い。共創プロセスと生み出した成果について、関係者に話を聞きました。

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写真左から)京王重機整備株式会社 車両事業本部北野事業所 加藤 浩史さま、車両事業本部営業工事一部 岩本 知子さま、代表取締役社長 寺田 雄一郎さま、ソニーデザインコンサルティング 山内 文子、江下 就介

“らしさ”の深掘りから、働く意味を考える

京王重機整備株式会社は、京王電鉄グループの車両整備や保守を担う企業で、創業80年を超える歴史を持ちます。その技術力を基盤に事業を多角化し、現在では他社の車両整備や不動産運営も手掛ける、グループの中核を担う存在に成長。100周年に向けて更なる成長のために、次の一手として何をすべきかを考えていました。

創業100周年の節目に向けて

──寺田社長が当時感じていた課題について教えてください。

京王重機整備 寺田 雄一郎さま(以下、寺田):

筋肉質の組織に生まれ変わったのは良いことですが、同時に利益偏重主義になっていないかも、気になっていました。車両整備を事業の軸として長年続けてきて、まじめで堅実な社員が多い中で、彼らが安心して働ける環境を整え、持てる力を十分に引き出すことが、さらなる経営基盤強化にとってとても重要だと考えたのです。

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──なぜソニーデザインコンサルティングにご相談いただいたのですか?

京王重機整備 岩本 知子さま(以下、岩本):

創業80周年を機に、100周年時点でのありたい姿を定めるプロジェクトを発足させることになりました。その時、外部からサポートいただく存在として、寺田が京王電鉄時代から付き合いのあったソニーさんにお声かけし、「100プロ」として2022年からスタートしました。

寺田:

私たちの世代にとって、ソニー製品への信頼は厚いものですし、デザインに魅了されたことも幾度となくありました。モノのデザインだけでなく抽象度の高い概念のデザインなども手がけられていることを知っていたので、ぜひとも100プロをお手伝いいただきたいと思ったのです。

ソニーデザインコンサルティング 江下 就介(以下、江下):

ありがとうございます。キックオフ時に印象深かったのは、寺田社長から「100プロから出てきたアウトカムは、一切ノーと言わない。ずっと支援するから安心して取り組んでほしい」と言っていただけたことでした。プロジェクトメンバーに全面的な信頼を寄せておられることがわかって大変心強かったのですが、その言葉に込められた意味を教えていただけますか?

寺田:

100プロは、2043年の時点で自社がどういう会社であるべきかを考えるプロジェクトですから、その時点で会社を引っ張っていく人たち、つまり今の若い人たちの意見で推進するべきと思っていました。私が社長に就任してすぐ実施した全社員への意見交換会でも、若い人たちの問題意識は高く、そのことに関心しました。だから私は、プロジェクトの内容にあれこれと口を出すのではなく、決めたことをバックアップすることに徹しようと思ったのです。

企業理念はなぜ浸透しにくいのか

──100プロの実施内容について、教えてください。

京王重機整備 加藤 浩史さま(以下、加藤):

100プロではまず、プロジェクトメンバーを組織し、アンケートやインタビューによる情報収集を行いました。そして、出てきた結果を分析し、どんなインサイトがあるのかを把握し、その中で「すべての人の“あんしん”をつなぐ」というキーワードが出てきました。

社会インフラを担う車両整備会社として、お客様の「安心・安全」を最優先に考える意識は、社員全員にしっかりと浸透しています。その上で、社員が安心して働くことができ、家族も安心させてあげたい、と思っていることがアンケートからわかってきたのです。“あんしん”は、私たちの事業の根幹であり、次の100年になっても変わらない大切な言葉だと再認識しました。

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──100プロから、行動規範策定のプロジェクトに移っていった背景について教えてください。

寺田:

言葉として良いものができても、それを額に入れて飾っておいては機能しません。言葉を自分たちで活用し、社員一人ひとりの行動にまで落とし込むことで、ようやく成果が出てくると考えた時、行動規範の整理が必要だと感じたんです。

岩本:

企業理念については、20年ほど前に定めた文言がすでにありました。しかし、若い社員に聴くと、企業理念に馴染みがないこともわかってきました。そこで理念の見直しと新たな発信が必要となり、「100プロ」の流れから、ここもソニーデザインコンサルティングさんにお願いすることになりました。

江下:

企業理念に馴染みがない、つまり組織の中で浸透していないということは、珍しいことではありません。その理由を私なりに整理すると、次の2点と考えています。
1つ目は、「企業理念」「企業姿勢」「経営方針」「ビジョン」「パーパス」など、理念の表現にあたる言葉が多くあるケースです。また、表現されている中身はとても正しいのですが、言葉自体が難しいものであったり、正しさを求めるあまり長くなってしまい、覚えられないケースもあります。
2つ目として、行動規範など、組織としてのありたい姿が明確になった後に、自分たちがどうなりたいかがイメージできていないことが挙げられます。言葉を定めるとなると、どうしてもキレイに、品格を重視した表現にまとめてしまいがちですが、それよりも得たい結果を先に描き、そこから逆算して言葉を選ぶことが必要です。

これらを踏まえて、まずこれまで京王重機整備の中で掲げられてきた理念や大切にされてきた価値観をリビジット(ふりかえり)し、構造を整理する「言葉のデザイン」から始めました。

ソニーデザインコンサルティング 山内 文子(以下、山内):

言語化にあたっての検討の結果、以前100プロの活動目標として定めた「すべての人の“あんしん”をつなぐ」を、存在意義として位置付け、それを実現するために、京王重機整備として大切にしたい価値観とセットで発信していくことにしました。言葉を決める際の判断軸として、「ならでは感」「ワクワク感」「刷新感」を意識したのですが、100プロにおける抽出と決定プロセスがまさにその実践でした。ですので、存在意義としてふさわしいとすんなり決まったのですが、大切にしたい価値観については何度も検討を重ねて言葉選びを行いました。

江下:

「すべての人の“あんしん”をつなぐ」の「つなぐ」という表現にこだわられた理由を加藤さんに伺ったところ、鉄道に関わる事業を展開されている中で、車両と車両、駅と駅を「つなぐ」といったように、「つなぐ」という言葉をとても大切にされていることがわかりました。「ならでは感」の表現として素晴らしいと感じ、そのまま使わせていただくことになりました。また「京王重機整備が大切にする価値観」は、これまで行動指針として掲げられていた言葉をベースに、メンバーひとりひとりの視点から徐々に社会や未来に拡がっていくイメージをもって選ばれました。

A values booklet
京王重機整備の存在意義と大切にする価値観をまとめた小冊子。他にも名刺サイズのカードや社長の発信資料など、浸透のためのツールを制作した。
Purpose&Values
言語化された存在意義と大切にする価値観。例えば、価値観の中にある「発想と技能」は、もとの案では「発想と技術」だったが、技術という言葉が工場勤務者にはしっくりきても、事務業務に携わるメンバーにはピンとこない可能性がある。では、技能という言葉だったら?そんな細かい議論を重ね、慎重に言葉が選ばれていった。

自分たちだけではたどり着けない場所へ

──ソニーデザインコンサルティングとのやり取りで印象的だったことを教えてください。

寺田:

これは私の勝手な思い込みだったのですが、初めは私たちを表現する何かカッコ良いフレーズを提案してくれるものとばかり思っていました。ところが、「言葉をつくるのは、私たちではなく皆さんです」と言われ、驚いたと同時に、確かにそうだと腑に落ちました。よく考えてみれば当たり前で、自分たちが大切にしたい価値観は、自分たちから出てきたものであるべきです。それをともに深掘りしていただく立場として協力いただけたことで、自分たちらしい表現にたどり着けたんだと思います。

江下:

そうですね。ソニーデザインフィロソフィーを再編した際も、新しい言葉をつくりだしたり、どこかから持ってきたのではなく、メンバーの中にすでにあった言葉の再整理をおこないました。京王重機整備さんの場合も、議論自体は皆さんでしてもらい、それを適切にデザインするのが我々の役目と思って取り組みました。

岩本:

もちろん、元の言葉は私たちから出てきたものではありますが、まとめる手腕はとても私たちにはできないものです。存在意義の横に置いてある、社内でポエムと呼んでいる文章には「私たちの仕事が見事に言い当てられている!」と感動しました。対外的な説明にも使えるし、「これの映像バージョンも作りたいね」などと、イメージが一気に広がって盛り上がりましたね。

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ポエムと呼ばれるテキスト。自分たちがなんのために働くのかを伝え、働く人の気持ちを鼓舞する表現になっている。

山内:

最初に発表した時は、その場がシーンとして、静かな感動がありましたね。このままTVコマーシャルにできそうというお声もあり、手応えを感じた瞬間でした。

──このプロジェクトを通じて成長したことや、今感じていることを教えてください。

寺田:

うちの社員たちは、能力は高いのですが、今まで自分を表現する機会に恵まれなかったんだと思います。それを、おふたりがうまく導いてくださり、プロジェクトメンバーが成長した姿を見られたことはとても嬉しいです。

加藤:

私も一連のプロジェクトを通じて、仕事に対する取り組み方が変わってきました。うちの会社は「返事はイエスかハイのどちらかしかない」と言われるくらい、上位下達の強い文化で自ら考える力が弱い組織でした。これからは自分たちの世代で考えていかないといけない。言われたまま文句を言っていれば良かったのが、そうもいかないと思い始めて、自分ごととして考えるようになりました。その意識の変化は、とても大きいですね。

岩本:

例えば休暇ひとつとっても、「こうなればいい」が今は実現できる環境にあります。だからこそ、他責から自責に考え方が変わっていくのだと思います。自らルールを作り、自らを律していく。その訓練として、今回のプロジェクトは大きな学びになりました。

寺田:

100プロから続く3年間で、社員も組織も確実に変化してきていると実感しています。ぜひソニーデザインコンサルティング株式会社のみなさんには、引き続き伴走いただいて、彼らが真の意味で自走できるようになるまで見守ってほしいと思っています。

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「京王重機整備行動指針策定プロジェクト」要点のまとめ

・創業100周年を見据え、自分たちの存在意義や大切にする価値観をまとめる必要があった
・定性および定量調査を行い、大切にしたいキーワードを抽出した
・ゴールイメージを共有し、「ならでは感」「ワクワク感」「刷新感」を判断のポイントとして言葉を確定させていった
・社員への伝達と浸透を促すツールのデザインを行った