SONY

TALK SESSION #01

「十人十色の音づくり」


1

リモートでのものづくり

細田:ambieの代表の三原さんを招いて、プロダクトの開発ストーリーの裏側を話していきたいと思います。去年の4月からですかね?

三原:そうですね、長いですね。

細田:この大変な時期にプロダクトを作るっていう大胆なことにチャレンジしましたね。

今回のテーマは「十人十色の音づくり」ということで、ambieが発売から4年経って、生まれ変わるというタイミングに、いろんな人の使い方、ライフスタイルを感じながらプロダクトを作っていきましたね。

三原:元々ambie自体が組織も小さいし、人も少なくて、更にオフィスが無くなってって考えるとえらいだったんで、細田さんが1号機からいろいろやっていただいてたという共通の体験があったんで、まだ代名詞で通じることが多かったのは、すごく助かりました。

あの時のあれあるじゃないですかと言った時に、八割方理解していただけたのは贅沢だったなと。

細田:ambieって装着感が大切なんで、1つマスターとなる耳をつくって、この耳ベースでやっていきましたね。
実際はデータを作って、お互い提案しながら、ラピッドプロトタイプをいっぱい作りましたね。自分にはめたり、マスターの耳にはめたりして。

三原:共通のものをお互いにどれだけ持てるかというのが勝負所でしたね。机を囲んで、同じものを触りながら、このバネっ気がって言えないんで。
表面のザラザラ感を表現するのに、あの会社のこのマウスのあのザラザラ感って言われたら、その場でアマゾンでポチって翌日届いて「細田さん、やっぱりザラザラしてますね」みたいな。リモートでなんとかしていくというのが、面白かったです。

細田:宅配便とアマゾンと、いろいろなものを使って、今回成し遂げたという感じですね。

三原:そうですね、今回に限っては、アマゾンと宅配便がものづくりのインフラになってましたね

細田:仕事って今はEメールで出すんですけど、今回は宅配便で「届きましたか?」って。

三原:メールの意味がだいぶ違ってましたね。

細田:どんどん段ボールが溜まってきましたよね。

三原:今回、その段ボールをうまく活用したパッケージを提案してくれましたよね。アイデア聞いて、みんな家にある段ボールを切って再現するというプロセスが面白かったですね。

細田:そうですね、宅配できた段ボールを切って、パッケージのプロトタイプを作りましたね。

三原:強制的にものづくりの工夫をするから、素材が今までの前提と違うというのがよかったです。
ambieが完全リモートに移行して、私が東京の端っこで、細田さんが鎌倉、あと中国工場側の人たちとも話をしながら、完全リモートだったので、一回も会ってないかもしれないですよね。

細田:そうですね。

三原:今気づいたけど、凄いですね。

この完全リモートになってみて、家族以外と話す時、全てイヤホン経由で話すんで、ambieを作るのを全部イヤホン経由でコミュニケーションしながら作ったのは、装着感とか大事だなと実感しながら作ってました。
今はイヤホンが、完全に人と会う時のインターフェースになってますもんね。

細田:プロトタイプが途中から、しっかり耳にハマるようになってしまって、着けてるのを忘れちゃうんですよね。このままご飯食べてたり、お風呂入ってたり、朝までつけてたこともありました。

三原:今回のために、この3Dプリンターを購入したんですけど、これあったのは、ほんと助かりましたね。ソニーのクリエイティブラウンジなどを活用してましたけど、さすがに業者さんに依頼して、3Dプリントしてというのを待っていると、リードタイムが勿体ないので。
どんどん部屋が工場化していってしまいましたね。試作のプロセスが、ガラッと変わりましたよね。

細田:リモートで不自由だから、飾ってもしょうがない。装着感が命だから、ものづくりの本質に近づけたという感触がありますよね。

三原:そうですね。
3Dプリントすると何かしら必ずボトルネックになるとこあるんで、1回1回小さな決定をできるっていうのは、ものづくり的には安心感ありましたね。
全部試すというよりは、1回 3Dプリントしてみて、3案のうちこれでいこう。とか、サンプルを送るときにも、一度自分で整理しなきゃいけないので、リモートの少ない帯域の中で、考えていることを正確に伝えるために、強制的に毎回毎回情報を整理しなきゃいけなかったのですが、これは本当は普通にできてた方が良いんだろうなと思いました。
 
細田:今回こだわったのが、着けた時に存在感を見せるか見せないか、アピールしたいんだけど、存在は隠したいという一見矛盾した感じですが、正面からの見え方をすごい大切にしましたよね。

三原:1号機の時はプロダクトの見え方の良さを気にしてましたが、今回は明確に着けた状態の良さでデザインしていきましょうって、最初に合意しましたよね
それもあって、話ながら自分で着けてかっこいいですか?とか、この角度いいですね!似合いますね!という対面で装着した状態で話すっていうのが自然にできたのは意外と良かったのかもしれないですね。


2

「音」を楽しむ

三原:いわゆる没入型の原音再生といわれているソニーの音づくりとは、ちょっと違う音づくりというか、考え方ができているかなと思っています。「日常に添える音」という感じですね。

ストリーミングサービスで、ユーザーがどこでも誰でもどんなところでも聴けるようになった時に、音楽の選び方が、気分とかやりたいことに合わせてプレイリストを選ぶというのが普通になってきていて、楽曲を正座してしっかり2時間聴くって楽しみ方の他に、自分の生活にBGMとして気分をエンハンスするという元々のambieのコンセプトは、すごく合うなと思ってまして、そういう楽しみ方ができてる気がします。

特に今、日常外出もできないですし、特別な体験っていうのをしづらい時に、普段の日常に音楽を添えて、近所の散歩でも楽しくなる。曲が違うだけでいつも見ている景色が違ったりとか、単純な作業でも楽しめたりとか、環境としての「音」の使い方ができているのは、すごく新しいし、ヘルシーな体験だなと感じています。

細田:波の音に集中してみようとか、波の音を聴きながら、ボリュームはどの辺がいいのかボリュームを変えたり、波との一番バランスの良いところを探していく。そんな体験ができるのが面白いですよね。

三原:家で仕事をするようになると、裏が公園なので子供が遊んでる声とか、流行りの歌を合唱しているのとか、遠くから聞こえてきたりして、こういう体験っていいですよね。日常のサウンドスケープを楽しめるというのは、新しいと思います。

三原:1号機の頃から、皆さんに相談した時に「カレーじゃなくてふりかけになるような音楽の楽しみ方をしたい」と良く言ってたのを思い出しました。

白米の味にカレーがドンとのっかってくるよりは、白米が美味しくてたまんなくなるようなふりかけ的な楽しみ方っていうのを話してて、よくぞこれをambieのかっこいい形にまとめてくださったなと思います。

細田:とにかく体験自体がほんと不思議なんですよね、ambieって。

三原:これはやっぱり聴いてみて欲しいですね。

細田:自分でambie担当したんで、人に勧める機会が多いんですよ。「みてみて耳ふさがってないでしょ」みたいな。着けて話してる間に音楽再生すると、その人は大抵その音楽が周囲にも聴こえてると思ってるんですよ。みんなが「自分にしか聴こえてないの?」という驚いてるのをみてきました。

今回プロモーションに出てくれた10人に話を聞きましたけど、お母さんがいたり、職人さんがいたり、音楽の聴き方とか、周囲の音とか会話の仕方が様々だなと感じました。

三原:自分を演出する暮らし方みたいなのは、テーマとしてはそんなに聞いたことないですけど、使ってる人たちからすると結構自然にそれをやっていて、生活に音楽でフィルターをかけてサウンドスケープをちょっといじることで、自分の世界の見え方をいじってる、というのをすごく感じるので、ユーザの使い方は作ってる私たちよりうまかったりしますね。

テレワークになったから余計に1日中イヤホンつけて暮らる時間が長いので、家族の時間と仕事の時間の2つが生活の中でまじちゃってるので、そこでイヤホンするとどうしても選択的になってどっちかに迷惑かけなきゃいけないっていう感じだけど、ちゃんとそこがコミュニケーションを両方と取れる状態を保てるのは、ambieとしても新しい価値だなと思います。

細田:ずっとYouTuberの放送を聴いてるのを、ambieだったら家事しながらできるし。

三原:子供の声とか家族の声とか、ちょっとした声かけに気付ける状態なのは良いですよね。パーソナルパブリックの考え方も変わってきているので、家にいると、仕事してる父親と、宿題やってる子供と、家事をやってるお母さんて、実はパーソナルな中だけどそれぞれちょっと違うモードで過ごしてるじゃないですか。
でも家族で同じ場を共有してて、そういう時にイヤホンで遮断しちゃうのってすごくトラブルになりやすいですよね。「もうゲームやめなさい」って時に声が聞こえないだけでも、ちょっとした違う感覚になっちゃうんで。
かといって個人の時間に楽しみを削るというのもおかしいし、その両立できるみたいなのは、今、家庭内でもいい感じに音を混ぜるっていうのが大事だなぁと最近思いますね。


3

十人は無限色

細田:今回チャレンジしたかったことはプロモーションで、開発途中からお客さんと一緒にモノを作っていくようなことができないかなぁって考えてたんですよ。

10人集めて「その10人の使い方を教えてもらいましょうよ」というプロモーションを提案できたのが面白かったですね。

三原:そうですね。普通のプロダクトやっるときだったら、「20代のこんな人です」とか、「このぐらいのペルソナで、こういう社会人だと思うんで、こんな感じの人でどうでしょう?」とか提案があるんですけど、今回10人選ぶ時に「この人こういう暮らしをしてて、こんな仕事してて、こんな感じのこと言うような人なんすけど。あとこんな物を持ってたりするんですよ」とか、友達を紹介されてんのかなって感覚がすごい面白かったですね。
その人となりっていうか、本当にひとりの人間を紹介してもらって、「この人にambieをつけてもらいます」って話し方でしたね。

細田:都会に住む人たちと、湘南・海側に住む人たちを対局に写して、お互いが足りないものだったり、豊かなものだったり、無いものを求め合うみたいなことがやりたかったんですよ。

細田:今回の10人の中で、面白かったのが、葉山の女性の猟師さん。海の上でボードに乗ってると、注文が入ったり、子供から電話があったりするみたいなんですよ。今までスマホを3回くらい海に落としたらしいんです。濡れた手でポケットから出すから、滑ってしまうみたいなんですけど。
ambieだったら、ずっと着けっぱなしで、船の上でも周囲の音を聞きながら、安全に注文取れるからいいねと、話してました。

三原:こちらからだと全く出てこないですもんね、そのようなユースケースは。臨場感が全然違いますよね。
ambieのコンセプトが、「自分の生活があって、それを演出する音楽」なので、今まではユースケース毎に「家事をやってる時に音楽が聴けるのはいいよね」とか、シーンで切り取るとなんかウソ臭くなっちゃってしまうんですよね。

一人一人の生活をまるごと引っこ抜いてきてくれて、その中にambieを使って、こういう楽しみ方をしてくれているとか、自分の生活をこう彩っているユーザーがいます。というのを撮ってきてもらえたのは、すごく良いなと思っています。

あくまで、主役はプロダクトではなくて、それを使っている人の生活で、そこにambieが入るとちょっと彩りが出てます。というのが伝わる良い企画になってて、嬉しかったですね。

細田:浅野さんという方はランナーで、ランニングの時にambieを着けて走るんですけど。一方、ケータリングサービスもやってるんで、アトリエで料理をするんですよね。やっぱり、モノを切る時って、大根とかが切れているトントントントンっていうまな板の音って大切じゃないですか。

三原:歩いてる時に曲を聴くと、自分の進むステップよりも少しだけペースの速い曲を聴くと、ちょっと歩みが速くなって、少しだけ前向きな気持ちになれるというのはありますね。
自分の生活音に音楽が混ざってるからこそ、お互いが作用しあって、今度は自分のペースにあった音楽を聴くと、自分のものになった感じがする。そんな生々しい体験が今回のプロモーションで伝わると良いですね。

細田:今年コロナがあって、世の中の人って、いろんなことを考えたと思うんですよ。そういう時に、カッコつけてる場合じゃないなと思う人もいるし、本質が一番大切で、無駄なことを省いていくという生き方もあるし。
もしコロナが明けたら、真っ先にあれがやりたいとか、これがやりたいとか、みんな思ったと思います。

10人の中のyaeさんは、撮影時にambieを渡しにいったら、次のチャレンジを決めてたんですよ。東京を離れて長野に行って、農業をやるらしいんです。
コロナが明けた時に、何かやろうって決めて、一歩踏み出すような時に、ambieがちょっと横にいてくれたら良いなと感じました。

細田:そういう意味で、今回のキャッチフレーズ「世界が 変わる。」という言葉を作りましたね。世界というのは個人によって大きさが違うんですけど、自分の周りの30cmだけかもしれないし、もうちょっと広いかもしれないし、もっと広い世界かもしれない。
いろいろあるんですけど、コロナが明けたら本当に世界が変わるんだな、というのを感じて欲しくて。だからambieを手に入れて準備しよう!みたいな(笑)

三原:コロナ渦で結構世の中が変わってしまって、2つあったと思うんです。1つは、世界が自分のどうにかできる範囲じゃなく変わってしまうのと、逆に、そうなった時に、捉え方とか、じゃあコロナの生活を楽しんでみようとか、何もできなくなったからこそ、考え方とか行動や受け取り方で、世の中を変えていくことができるみたいなポジティブな流れもあるかなと思ってます。
「世界が 変わる。」というのは、世界自体を直接変えようというよりは、ambieを使ってその捉え方を変えてもらったり、自分の行動が変わって、自然と世界の感じ方が変わってったり、それがきっかけで、周りの世界にポジティブな影響を与えられる。みたいなうまい相乗効果が作れたらいいな、というのが込められている良いワードだなと思っています。

細田:「世界が 変わる。」って、三原さんがおっしゃった通り、世界の感じ方が変わるんですよね!それぞれの人が、視野も変わるし、行動も変わっていくというのが面白いと思います。

三原:コピーでいうと、ambieは設立以来、「ながら聴き」とか「聴きながら、聞こえる」と言ってきましたが、実は半歩足りてなかったところは、これってHOWだったんですよね。ながら聴きで両方の音が聞こえます、という機能をずっと訴求していました。
これは元々耳を塞がないイヤホン自体が世の中に広がってなかったので、まずはそこを知ってもらおうと機能的な訴求をしてたんですが、ambieもお陰様でだいぶ台数が出て、世の中的にもながら聴きが浸透してきました。

今回完成形のTrue Wirelessモデルを出すにあたって、じゃあ、ながら聴きのイヤホンがあるとユーザーに何が提供できるのかというのをダイレクトに伝えてみたいです。とお願いしたところ、見事に「世界が 変わる。」というコピーをいただけたので、ここがうまく伝わってくると、すごく良い体験が作れるかなと思っています。プロダクトの話をしてないコピーというのが良いですよね。

細田: ambieの体験とともに、いろんな人たちがいろんな使い方を見つけてもらえれば良いなと思います。製品できた後のマーケティングプロモーションで頑張っていきたいと思います。
今後ともよろしくお願いします。

三原: よろしくお願いいたします。引き続き。

ambie Corporation